野球肩の治療

インナーマッスルアウターマッスルという言葉は聞いたことはありますか?
では、ローテーター・カフは聞いたことはありますか?
インナーマッスルとは、ローテーター・カフに代表される肩の深部にある小さな筋肉を指しています。色々な解釈があるようですが、インナーマッスル=ローテーター・カフと理解して下さい。
ローテーター・カフ(肩腱板)は、1、棘上筋 2、棘下筋 3、小円筋 4、肩甲下筋の、特に上腕骨骨頭付近(大結節・結節間溝)に付着する、板のようになっている腱のことです。
そして、肩関節をしっかり繋ぐ役目と軸を作る役目を果たす重要な筋肉であることがポイントです。
軸を作る役目・・・このローテーター・カフは、人間にとって非常に大きな役割を担っており、スポーツ選手、特に野球における投手との関わりは見逃せないものがあります。

人間の進化とは、4本足の四つん這い姿勢から次第に前足(腕)を使って様々な行動を行えるようになりました。そして、やがては2本足での直立姿勢をとるようになり、動作の範囲は格段に広がったのです。

2本足の進化に伴い、やがて腕として上手に利用し始めると骨や関節の構造も当然のように進化を遂げました。要は固定された状態から腕としての利用範囲を広げるために、多方面に動かせるようになりました。すなわち何を意味するかというと関節の凹凸の関係が浅くなっていったのです。
時に、肩が抜けた、肩が外れた、脱臼したなどと聞きますが、軸がしっかりしていたものが進化に伴い肩関節の凹凸が浅くなったことにより、骨同士が動きやすくなった反面、抜けやすくなり軸ができ難くなったのです。
そのために、骨と骨を固定し関節を安定させる役割をローテーター・カフがかなりの割合で受け持つようになったのです。

私たち人間は、直立で生活するうえで約4〜7kgある腕を絶えず吊っている状態にあります。この不安定な状態を先にあげた4つの筋肉が上腕骨と肩甲骨を繋ぎ合わせて、調整する役目を果たしています。
女性はローテーター・カフが弱くて、肩コリの症状が起こりやすく、また、加齢とともに弱くなってくるといわゆる、四十肩・五十肩などの障害の原因にもなります。
そして、野球選手は絶えず激しくローテーター・カフを使って投球します。その酷使の中で十分にローテーター・カフを強化しなかった場合、様々な障害が発生しても無理はありません。
ローテーター・カフは筋肉自体が深部にあり、しかも細く発揮する力も弱いので軽視されていましたが、障害や故障の発生はこの部位が多く、投球中の腕の動きと密接に関係しているのです。
棘上筋は腕を外転する時に、棘下筋と小円筋は腕を外旋させる時に、肩甲下筋は腕を内旋させる時に働きます。このようにインナーマッスルは主に回旋(捻る)の運動を担当し、これに対してアウターマッスルは主に直線的な動きを担当します。そして、もう一つの特徴は近位つまり関節の近くに付着していることです。

アウターマッスルとは、肩の表面つまりインナーマッスルの上に覆いかぶさるようにあり、大きな筋肉のことを総称しています。1、三角筋 2、僧帽筋 3、広背筋 4、大胸筋 などがあります。この筋肉は見たとおり大きく、そして大きな力を発揮します。この筋肉は非常に鍛えやすく、直線的に力を発揮するのが特徴です。インナーマッスルとは全く正反対で、しかも遠位に関節の遠くに付着しています。

さてここで、インナーマッスルの棘上筋とアウターマッスルの三角筋は主に腕を外転させる時に働きますが、外転する時に三角筋は大きな力を発揮する要素を持っているので、棘上筋よりも優位に働くことになります。
遠位に付着している三角筋が優位に働き過ぎると、上腕骨骨頭が関節から離れるかたちで外転していきます。これが問題点なのです。
棘上筋がうまく軸を作りながら外転すると、肩峰と烏口肩峰靭帯の下で働きますが、三角筋が働き過ぎると骨頭が浮くので棘上筋が付着している大結節が、肩峰下面や烏口肩峰靭帯と擦れたり、ぶつかったりするようになります。
これが肩の障害でも発生率の高いインピンジメント・シンドローム(ぶつかり症候群)の原因です。

投手が振りかぶる動作、テークバックからコッキングの初期(腕を外転させる時)に肩の痛みを感じるのがそうです。つまり三角筋に力を入れている、いわば緊張状態にあるといえます。よくテークバックは楽にというのはこのことです。リラックスして投球動作に入るだけで、インピンジメント・シンドロームなどの予防になるわけです。

筋肉は急に伸ばされると反射的に縮もうとしますが、これが伸張反射です。
肩関節の肩甲下筋の伸張反射が腕のしなりを生みます。インナーマッスルの肩甲下筋は関節に対して近位に付着しているので、どれだけ肘が遅れて出てくるか、物を加速させる時には大きな力を長い距離にわたって加えればよいわけです。腕がよくしなり、鞭のような状態で投げれば、ボールに回転数を与えやすく、しかもバッターにとって見ずらく、打ちにくいと言えるでしょう。
また、三角筋を全く鍛えてはいけないというのではなく、投球動作においては腕を加速させる時は三角筋前部が主に働きます棘上筋と三角筋をバランスよく強化すれば、障害の発生なく投球動作に生かせることができます。

そして、肩関節可動域の影響は肩甲骨や上腕骨にありますので、骨格としての機能性向上を図ると共に肩関節水平伸展の可動域を確保し、骨端を引き付ける力を取り戻すことにより正常な位置に関節が保たれることが期待できます。
筋活性理論により筋肉の性能を引き出して、筋肉の収縮弛緩性能向上を目的に脳に理解させてインプットすることで野球肩は改善されます。
以上が野球肩の発生原因と理論、治療法になります。

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